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福井県鯖江市でメガネフレームづくりが盛んなのはなんで? [探究心の喚起]

中学生の地理の教科書で、地場産業の事例として福井県鯖江市のメガネフレームづくりが紹介されています。国内生産の約9割を占めるまで成長している鯖江市のメガネフレーム作り。なぜ鯖江市でメガネフレームづくりが盛んになったのかを調べてみました。

①鯖江市でメガネフレーム作りが盛んになったのは何で?
福井県は、中部地方の中で日本海側に位置し、北陸地域に相当します。日本海側の気候は冬に雪が多いという特色があります。これは、冬に大陸から吹いてくる北西の季節風が日本海を渡るときに水分を含んで雲をつくり、山地にぶつかって雪を降らせるためです。
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鯖江市が眼鏡フレームの産地として栄える礎を築いたのが、増永五左衛門です。五左衛門は1871年(明治4年)、現在の福井市生野町(しょうのちょう)に生まれ、28才の時に生野の村会議員になりました。生野は冬には豪雪で埋もれ、家に閉じこもる毎日が続く貧しい村でした。「生野のくらしをなんとかよくできないか」と考えた五左衛門が出した答えが、メガネフレームづくりでした。五左衛門がメガネフレームづくりに注目したのは、次のような理由からのようです。
・少ない初期投資で現金収入が得られる事業。
・家の中で作業できて収入が得られる事業。
・文明開化で新聞などの活字文化が庶民に広がっていた事から、近い将来メガネが必需品になると予測していたから。
このような地域の特性と五左衛門の先見性を土台として、1905年(明治38年)に生野村でメガネづくりがはじまり、近隣の鯖江へと広がっていたそうです。

メガネ作りはゼロからのスタートで、大阪から職人を招き、若者を弟子として製造技術を習得させました。「仕事は人である、人を作るには教育」という信念のもと、工場の二階には学校も開いていたそうです。また、「帳場」と呼ばれる工程ごとに細分化された職人グループを設け、分業独立と技術向上を目指しました。このように、専門分野に特化して技を磨く事ができる環境と、忍耐力を要する細かい作業を丁寧に根気強くこなせる県民性が、鯖江のメガネの品質を引き上げ、1935年(昭和10年)には、全国1のメガネ生産量を誇るまでになりました。

その後、戦後の高度経済成長の中でメガネの需要が急増。製造自動化による生産効率のアップと品質向上と技術開発に注力し、鯖江のメガネは海外の一流ブランドからの製造依頼も増えていきました。1981年(昭和56年)には、世界初のチタン金属を用いたメガネフレームの製造技術の確立に成功し、鯖江のメガネが世界に知られるきっかけになりました。

②鯖江のメガネの出荷額が落ち込んでいるのは何で?
しかし、1992年(平成4年)をピークに出荷額が落ち込んでいきます。1992年に約1200億円あった出荷額が、2014年(平成26年)には約600億円と半減。原因は中国メーカーの低価格フレームの流入と、国内における格安メガネ店の増加が考えられます。

③出荷額の落ち込みにどう対応する?
2000年以降、鯖江市は事業者と一体となり、「鯖江ブランド」を打ち出し、製造だけでなくプロモーションや販売も手がける戦略に方向転換しているそうです。鯖江市と地域事業者の取り組みを整理します。
・2003年、20社以上が加盟する産地統一ブランド「THE291(ザ・フクイ)」創設。
・2007年、鯖江市環境部商工政策課がウェブマガジン「鯖江メガネファクトリー」を配信。メガネを身近に感じてもらえるよう、メガネ職人やメガネの製造技術などを取り上げ発信している。
・2008年、東京南青山に、鯖江市が直営するメガネショールーム「GLASS GALLERY291」をオープン。
・2009年、東京ガールズコレクション出展。ブランドデザイナーとコラボしたファンショングラスを「産地鯖江」の特別ステージとして発表。
・2010年、鯖江市のシンボルタワー「メガネ会館」内に「めがねミュージアム」オープン。最新モデルが購入できるショップ、めがねフレームづくりを体験できる体験工房、めがねの歴史を学べるめがね博物館によって構成されている。

また、調べた限りでは「JINS」や「ZOFF」「眼鏡市場」などでもプレミアムモデルとして鯖江のメガネフレームを販売しているようで、官民一体となって生き残りをかけた戦いをしている様子が伺えます。このような取り組みを通じて、近年「出荷額全体」あるいは「一人あたりの出荷額」が増加傾向にあるというデータもありました。今後も地場産業をどう活性化させるかの事例として注目していきたいと思います。

参考
「眼鏡と希望-縮小する鯖江のダイナミックス-」
福井・鯖江めがね 総合案内サイト
メガネの聖地「鯖江」ちょっと意外な誕生秘話と戦略
眼鏡産地の盛衰 -福井県・鯖江市とイタリア・ベッルーノ産地比較のケース-
鯖江眼鏡産地の現状と変化の方向性
GLASS GALLERY291

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知能を鍛えるルーブリックver1.1 [知能を鍛えるルーブリック]

獲得目標を明確にし、より自己評価・講師評価をしやすいように改変。
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知能を鍛えるルーブリックver1 [知能を鍛えるルーブリック]

叩き台として作成した「ルーブリックver1」の補足と今後の検討事項です。
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■補足
縦軸に設定している「知識獲得」「メタ認知」「実行力」は、スタンバーグの三頭理論の「分析的知能」に対応する。

「創造性知能」の成分である「新しさを処理する能力」「情報処理を自動化する能力」は「実行力」内の横軸(個人から社会への対象の広がり=習熟度)に組み込んだ。

「実際的知能」は「分析的知能」の現実的世界への応用という側面があるため、「適応(文化適応)」「形成(環境改変)」を「実行力」、「選択(長所・短所の把握と適合)」を「メタ認知」の横軸中に組み込んだ。

■今後の検討事項
検討事項①「読解力の位置付けは?」
「知識獲得」については、現状「誰でも成績が上がる勉強法」の実践を想定しているが、「知識獲得」のためには「読解力」が欠かせないと考える。現状、ルーブリック上に読解力に関する項目がないが、「読解力の育成方法」と「読解力の把握方法」を明確にする必要がある。スタンバーグによると、知能の高い人は、言葉の意味をその文脈とともに理解しており、語彙も豊富であるという。また、知識獲得成分を測定するには語彙脳力テストが最も効果的であるとしている。

検討事項②「集中力の位置付けは?」
スタンバーグの三頭理論によると、「注意と精神力の集中」が「メタ認知」の成分として記載されている。「集中力」も学習成果との関係性が高いと考えるが、「集中力を強化するにはどうすればいいか?」「集中力をどのように測定するか?」「ルービック上のどこに組み込むのが妥当か?」を検討する必要がある。

検討事項③「より適切な言葉は?
横軸を個人・他者・社会としているが、必ずしも習熟度と合致していない。より適切な横軸設定はないか?


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学びの地図ver5.1 [学びの地図]

「実践系」に指導方針の核となる「ルーブリック」を追加。

A.実践系
1.ルーブリック
2.勉強法指示
3.授業運営

B.追求系
  1.小学生の成績を上げるにはどうすればいい?
  2.数学ができるようになるにはどうすればいい?
  3.数学を勉強するのはなんで?
  4.読解問題を解けるようにするにはどうすればいい?
  5.思考力をつける授業にするにはどうすればいい?
  6.計算ミスをなくすにはどうすればいい?
  7.理解するってどういう事?
  8.信頼関係を深めるにはどうすればいい?
  9.説明できるようにするにはどうすればいい?
  10.読解力をつけるにはどうすればいい?

C.調査系
 C-1.教務力
  ①授業力強化
   1.指導技術
   2.探究心の喚起
  ②対話力強化
   1.効果的な声かけ
   2.保護者面談
  ③勉強法
   1.勉強の効率化
   2.思考力を鍛える
   3.勉強の動機付け
   4.記憶力強化
   5.習慣化の技術
   6.精神力を鍛える
  ④教育事例研究
   1.海外教育事例
   2.最新教育事例
 
 C-2.営業力
  ①マーケティング
  ②セールス
 
 C-3.統合力
  ①リーダーシップ
  ②ミーティング運営
 
 C-4.生産性の向上
  
D.生活系
 ①簡単料理
 ②おすすめの店
 ③おすすめスポット
 ④おすすめ生活用品
 ⑤節約術
 ⑥体調管理


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知能を鍛えるルーブリック [知能を鍛えるルーブリック]

「勉強法」「振り返り」「スケジューリング」と学習効果の関係を整理し、他者や社会との関係が学力とどう相関するかを検証し、より効果的な学習方法を提示するためにルーブリックを作成しました。

今後、ルーブリックの中身を更新する形で、より学習効果の高い教室運営をしていきたいと考えています。参考にしているのは、スタンバーグの「三頭理論(鼎立理論)」、ピアジュ、ヴィゴツキー、エンゲストロームの学習理論です。

縦軸に「知識獲得」「メタ認知」「実行」
横軸に「個人」「他者」「社会」とし、
獲得能力や獲得するために必要な状況に応じて、「学習」「他者協働」「社会適応」の3領域に分類しています。

ルーブリック.png

本来、社会適応のための実践的な学習、実践的なトレーニングの場があれば最善なのでしょうが、「入試での得点力」という学習塾に対する期待からずれてしまう気もします。

しかし、「他者協働」や「社会適応」といった能力も鍛えていきたいというのが個人的な思いです。「他者協働」や「社会適応」の領域を鍛える事と、入試での得点力には相関があるのかどうか?
ルーブリックに表現した能力を鍛えるにはどうすればいいのか?より適切なルーブリックは作成できないか?

引き続き追求していきます。

【参考】
・知能の理論(その4)……Sternbergの知能の鼎立理論(三頭理論)
・効果的な勉強法~教育理論をザックリ整理~
・問題レベル・評価を明確にする「ルーブリック」「思考コード」

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誰でも成績が上がる勉強法ver2.1 [誰でも成績が上がる勉強法]

正しい勉強方法で勉強方法で勉強しなければ学習効果はゼロ。正しい勉強方法を実践すれば、誰でも絶対に成績が上がります。学習直後に説明できるか確認する「リハーサル」を追加。「ノートの使い方」の項目を追加。

1.勉強のやり方
①問題を解く(数学の場合は途中式を書く)
※途中式を書かなければ、「どこで」「なんで」間違えたのか振返る事ができません。
※後でポイントが書き込めるように余白を多めにとる。
②すぐに丸つけをする
※すぐに丸付けをしなければ、間違ったやり方が身につき、時間をかけるだけマイナスになります。
③解説を見る(見る、または書きながら手順を追う)
※書いて手順を追うのは間違い直しではなく、あくまで理解をするための補助手段
④質問する(自分で説明できないと思ったら、どんな些細なことでも質問する)
⑤理解する
※一般的には、ここで反復に移りますが、ここで反復に移っても学習効果ゼロ
⑥自分の言葉でポイントをメモ・強調する(自分の頭で再構成)
⑦理科・社会などは「何」「何で」を問題にしてメモする
※「物質の分類のポイントは何?」「応仁の乱って何?」など
⑧リハーサル(間違えた問題を、ポイントを抑えながら通しで説明できるか確認)
※説明できなければもう一度解説を見る・質問する
⑨解答解説作成
※解答解説作成」。「何も見ないで」「誰かに説明するつもりで」「先生になったつもりで」作成する。
※⑧・⑨は何も見ないで再現する「想起反復」。ポイントを見て確認するという作業は、「わかったつもりになる」弊害がある。長期記憶に残す効果があるのは「想起反復」
※適切な想起反復のタイミングは1時間後・3時間後・1日後・3日後・1週間後・2週間後・1ヶ月後・3ヶ月後・6ヶ月後・1年後。
※「今日学んだこと」を文章化する5分間作文も想起反復として効果的。

2.授業の受け方
「理解する事」を目的とした授業の受け方は学習効果が低いです。人は簡単に「わかったつもり」になってしまう性質があります。「先生の真似をして説明できるようになること」を目的にする事で、学習効果が高まります。演習中に正解が出た問題や、あとちょとで正解が出そうな問題は、解説を聞く集中力が低下する傾向があります。「できる事」「理解する事」がゴールではなく、「先生の真似をして説明する事」を目的に授業を受け、意識的に「観る」「聴く」事に集中する事が重要です。

①姿勢を正して授業を受ける(肘を付かない)
※椅子を引くと自然と姿勢が正しくなります
②復習要・不要の問題の判断
※授業後に解答解説作成をする問題に印をつける
③ポイントを強調・または問題化してメモする
④「後で・・」ではなく、疑問点はすぐに質問して解決する
⑤授業直後に、復習要の問題についてリハーサルを行う。説明できなければもう一度ノートを確認するか、質問する。

(先生なりきり勉強法)
成績を上げるために必要な事は次の2点です
①説明できるようになること
②主体的に学ぶ事
この2点を兼ね備えているのが先生。すぐ後にこの単元を授業する先生になったつもりで授業を受ける事で、自然に正しい授業の受け方になります。

3.ノートの使い方
①ルーズリーフではなくノートを使う
②ノートは全科目を1冊にする
※スケジューリングや振り返りなども全て1冊のノートに集約する
※勝負は1時間後・1日後・3日後・1週間後の「想起反復」を実施するかどうか。1冊に集約していたほうが反復しやすい。
③後でポイントを強調して書き込むので、余白を多めに取る。
④「見やすく」「速く」を意識してノートを書く。


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「ダニング=クルーガー効果」と「成長の意識」のセットで引き上げる [効果的な声かけ]

成績上昇のためには、ドウェック教授が提唱する「成長の意識」を育む事が効果的だと考え、実践していく予定です。一方で、成績が伸び悩む生徒の事を考えると「ダニング=グルーガー効果」という認知バイアスを取り除く事も不可欠だと考えています。

「ダニング=クルーガー効果」と、その認知バイアスを取り除く方法。そして、「成長の意識」と組み合わせた声かけの方法を検討していきっます。

①「ダニング=クルーガー効果」とは
ダニングとクルーガーによる研究で、能力が低い人は、自分を客観的に観察する事ができず、自分を正確に知る事が困難なため、自分を過剰に高く評価してしまうというもの。成績の悪い学生ほど、自分の得点を高く見積もり、テストの成績が良いグループは自分の得点を正確に見積もるか、あるいは若干低く見積もっていたそう。
2012年の研究「Revisiting why incompetents think they're awesome(どうして能力の低い人は自分を高く評価するのか?)」では、次のような能力の低い人の特徴が挙げられているそうです。
・自分の能力が不足していることを正しく認識できない。
・自分の能力がどの程度不足しているかを正しく認識できない。
・他人の能力が正しく認識できない。

②「ダニング=クルーガー効果」の克服方法
論理的な思考や自分自身を客観的に評価するトレーニングを受けると、正しく自己評価する能力が向上し、ダニング=クルーガー効果を克服できる可能性がある。
・自分と他人の成績を比較してみる 。
・周囲の意見を真摯に受け止める。
・客観的なデータを確認する。
また、ダニング=クルーガー効果は、「自分は無知である」という事を知らない、認めないというところから始まるので、「自分はまだ何も知らない」と自らの無知を認める事が克服に繋がる可能性がある。
一方、経験を積むに従って、自他の能力をある程度正確に把握できるようになると、たいていは自分の能力が思ったよりも低いことに気づき、落ち込むことになる。しかし、さらに経験を積むことによって、一旦落ち込んだ自信は回復する事ができる。

③学びの活用
成績が伸び悩む生徒を見ると、質問がないか尋ねても「大丈夫ですと答える(わかったつもりになっている)」あるいは、勉強のやり方の改善をする指示をしても「自分のやり方にこだわる」という場合は多いです。自分のやり方に問題を感じないからこそ、曖昧な理解と非効率なやり方を継続し行き詰まってしまいます。

まずは、自己評価を高く見積もってしまう「ダニング=クルーガー効果」という認知を歪ませる性質が人間にある事を伝え、模試データや成果が出ている生徒の事例を元に、自分の課題点を客観的に言語化する時間を設ける事が効果的だと考えています。

課題点が見つかっても、行動変化と前向きな姿勢に繋がらなければ意味がありません。また、逆に自己評価を低く見積もる生徒が多くいるのも現状です。この場合も、自信のなさから自己評価を低く見積もっていても意味はなく、行動変化につなげる必要があります。

ここで重要になってくるのが、「成長の意識」についての話だと思います。「ダニング=クルーガー効果」によって、自己を客観的に評価し、行動改善する必用を自覚させ、「成長の意識」で、誰でも正しい努力をすれば、成績が伸びる事を伝える事で、成績上昇につなげて上げられると考えています。

参考
・認知バイアスとは?(知育ノート)
・ダニング=クルーガー効果とは認知バイアス?(知育ノート)
・【赤っ恥注意!】能力が低い人ほど自分を高く評価する?(COCORO NEXT)
・自信たっぷりな人は、能力が高いか低いかの両極端(flowthink)
・「成長の意識」を育むにはどうすればいい?

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「成長の意識」を育むにはどうすればいい? [効果的な声かけ]

「使える脳の鍛え方」の7章でキャロル・ドウェック教授の研究事例が紹介していました。

「知能」を褒めると、子供は賢い事が重要なのだというメッセージを受け取る。「努力の大切さ」を強調すれば、子供は素晴らしく変わる。

この文章を読み、ドウェック教授の研究成果を実践で活かせる可能性を感じ、関連記事や動画を調べてみました。

①「成長の意識(成長思考)」を持った子ども達の成果
ドウェック教授の研究では、「成長の意識(自分の知能は自分でコントロールできるという信念)」を持ったクラスの成果事例が紹介されています。例えば、居留地のネイティブアメリカンの生徒たちは、地域で最下位から、1年半後に1位になったそうです。その地域にはシアトルなどの裕福なエリアも含まれていたそうです。

②「成長の意識とは何か?」「どうやって育む事ができるのか?」
「成長の意識」とは、「失敗した時に「まだ学習の途中」と考えられるか」「自分の知能は自分でコントロールできるという信念を持っているか」。

(ニューヨーク私立中学校での実験)
ニューヨーク市立中学校の成績の悪い一年生を対象に、脳のしくみと効果的な学習方法を教えるワークショップを行った。その後、被験者の半数は、記憶に関する講演を聞いたが、もう半数は苦労して学ぶことによって脳がいかに変わるかという説明を受けた。懸命に努力して新しい事を学ぶと、脳が新しいつながりを作り、それが時とともに人を賢くするという内容だった。このグループはまた、知能は生来あるものが自然に発現するのではなく、努力と学習で新たなつながりが形成され、発達するとも教えられた。学年が進むにつれ、その生徒たちは「成長の意識」を持ち、いっそう積極的に学んで、好成績を収めるようになった。

(「成果」を目的にせず、「学ぶ事」を目的にする)
「成果」を目標にすると、無意識に自分の潜在能力を制限する。能力の証明や見せびらかしが目的になり、できる自信のある課題を選び、できる事を見せびらかしたいがために、同じことを何度も繰り返す。「学ぶ事(能力の強化)」を目的にしている人は、常に難しい課題を選び、失敗しても、もっと集中して独創的に練習に励むための有益な情報と捉える。

(「才能」ではなく、「プロセス」を褒める)
「知能」を褒めると、子どもは賢い事が重要なのだというメッセージを受け取る。努力、作戦、集中、忍耐、進歩といった「プロセス」の賞賛が、強くハツラツとした子を生み出す。

③「成長の意識」を持つ生徒と「固定された意識」の生徒の違い
「成長の意識」を持つ生徒と「固定された意識(自分の知能は生まれつき決まっている)」を持つ生徒の違いは「失敗」の捉え方。自分は頭が悪い、失敗したのは能力が足りないせいだ、と捉える人は、手も足も出なくなる。これに対して、失敗したのは「努力が足りなかったから」あるいは「やり方がまずかったから」と考える人は、さらに努力を重ね、違うやり方を試してみる。

「固定された意識」の生徒は、「失敗」した次にはカンニングをしたり、自分がましだと感じるために「自分より劣った人を探す」という結果もある。

④実践への活用
「成長の意識」を育むためには、次のプロセスが重要だと考えています。
1.正しい勉強のやり方を伝える
2.正しいやり方で勉強すれば誰でも必ず成果が出る事を伝える
・「成長の意識」を持ったクラスの成果事例の紹介
・「成長の意識」と「固定した意識」の成果の差を紹介
3.予測される困難と、困難を乗り越えるために努力する事で能力が磨かれることを伝える
・自分の許容範囲外の新しいことや困難を学ぶごとに、脳のニューロンが新しく強い繋がりを作り、何度も繰り返していくうちに賢くなれる。
4.成果は出さなければいけないが、目的は「能力の強化」
・学習塾である以上、成果は出さなければいけませんが、成果が出ない(失敗)した時の捉え方が重要。正しいやり方で正しい努力をしていれば、「まだ成果」に繋がっていないだけで、能力の強化はされているはずです。講師の役割としては、生徒・保護者が「正しい学習」をしている「正しい努力」をしていると実感し、成果が出るまでの途中経過にあると感じ、努力を継続してもらえる事が重要だと考えます。
5.才能を褒めるのではなく、プロセスを褒める

参考
・「頭がいい」と褒めるのは間違い(Logmi)
・必ずできる_未来を信じる「脳」の力(TED)

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

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  • 作者: ピーター・ブラウン
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2016/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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使える脳の鍛え方:7章ポイント整理 [勉強の効率化]

「使える脳の鍛え方」7章ポイント整理です

「7章:能力を伸ばす」ポイント整理
【キャロル・ドウェックの研究紹介】
・「知能」を褒めると、子供は賢い事が重要なのだというメッセージを受け取る。「努力の大切さ」を強調すれば、子供は思い通りに素晴らしく変わる」
・生来の知能を強調すると、子供はどうにもならないとあきらめ、失敗にうまく対処する方法を学べなくなる。
・より高度な学習と成功に必要な自己効力感・創造力・粘り強さを人に与えるのは、IQ以上に自制心や決意や成長の意識
・学習技術は積極的な要素の裏付けがなければ活かされない。積極的な要素とは、自分の能力を向上させる力の大部分は、自分でコントロールできるという単純ながら深い理解。

【アンダース・エリクソンの研究紹介】
・「計画的な練習」
目標を明確に定め、現在の能力レベルを越えようと努力を重ねること。計画的練習の特徴である「努力」「失敗」「解決」「新たな試み」によって、より高いレベルに到達するのに必要な新しい知識や適応力、複雑なメンタルモデルが構築される。専門技術は遺伝がもたらすものではなく、練習の量と質の成果であり、平凡な才能の人であっても、意欲や時間、ひたむきに続ける規律があれば優秀な専門家になれる可能性がある。

【努力の価値】
・メンタルモデルにまとめれば、一種の速記のように使えるようになる。繰り返し使うことで、脳が一連の運動と認知行動と能力を「ひとかたまり」に符号化するので、習慣のように自動的に思い出して、応用できるようになる。
・努力を必要とする学習は、新しい能力を築く事で脳を変える
・努力そのものが能力の限界を広げる。
・複雑な技術を習得したり、専門分野で秀たりするのに必ずしも特別な遺伝子は必要なく、むしろ自制心、決意、粘り強さによるところが大きい。
・意識的に練習し、繰り返し使っていると、やがて符号化が深いところでおこなわれ、無意識のレベルで動けるようになる。
・記憶の統合とは、あとで思い出して、応用するための記憶回路の増強
・練習を習慣にする能力は誰でも高められる。
・懸命に努力して新しい事を学ぶと、脳が新しいつながりをつくり、それが時と共に人を賢くする。
・「成長の意識」自分の知能は自分でコントロールできるという信念を持つ事が能力を高める事につながる。

今日の学びと、今後の追求課題
・自分の能力を向上させる力の大部分は自分でコントロールできるという認識を子ども達に浸透させたい。理論的根拠として、「ドウェック」「エリクソン」の研究の詳細を調査する。
・「自制心」「決意」「成長の意識」を育み、強固にするにはどうすればいいのか?「無理」「できない」「自制心がない」といった無気力な生徒に対してはどういったアプローチが可能か。
・「決意」はしても行動改善につながらない事例は多々見られる。「努力の承認」「努力の価値・効用」だけでは弱いと感じるので、追求を継続。
・思考スピードを上げるためには、無意識レベルで動けるようになるまで反復する事が不可欠だと再認識。
・記憶を統合するためには、類題演習など、新しい問題に適用するという段階をはさんだ方が効果的か。

使える脳の鍛え方 成功する学習の科学

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  • 作者: ピーター・ブラウン
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読解力を鍛える「思考の可視化」 [読解問題を解けるようにするにはどうすればいい?]

2020年の大学入試改革を待たずして、公立高校の入試問題も5教科全てにおいて問題文を正確に読み取る読解力の重要性が増しています。読解力を育成する一つの手段として「5分間作文」を実施していますが、国語の授業でも読解力を引き上げるための指導方法を確立したいと考えています。

現在可能性を感じている指導方法が「思考の可視化」という方法論です。先日、記述問題を解き終えた生徒に、どのようにして解答に至ったのかを記述してもらいました。日本語の特徴に関する文章を読んで、同音異義語が多い日本語の長所と短所を記述する問題でしたが、生徒の答えへのアプローチはさまざまでした。

①「同音異義語」というキーワードを元に本文を読み直す生徒
②「長所」「短所」という言葉をもとに、肯定的表現と否定的表現を探す生徒。
③英語の事例も本文にある事に注目し、「日本語」と「英語」の対比に注目する生徒

同じ問題でも、頭の使い方が全く違う事に驚くとともに、講師が今まで伝えていた解法が全く定着していないことも浮き彫りになりました。

この、「思考の可視化」と、「他の生徒や先生の思考過程の共有」は、読解問題の正解率を上げるための方法論として効果的なのではないかと考えています。

明確な方法論として形にするために、「思考の可視化」に関する先行事例を調査します。

【読解力を鍛えるための「思考の可視化」先行事例】
・複雑な文章を読解する方法(テクニカルライティング教室)
・「読解力育成のための教育実践とその評価」秋田喜代美(東京大学)
・可視化から自律的学習態度の獲得を目指す読解指導
・思考ツールを用いて文章の論理構造を可視化し,読む力を育む国語科授業の創造
・教科指導等を通じたPISA型「読解力」の育成に関する研究


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