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今治のタオルが有名なのはなんで? [探究心の喚起]

しまなみ海道で有名な愛媛県今治市。今治のタオルは鯖江のメガネフレーム同様、地場産業衰退の危機と戦っています。なぜ今治ではタオルが地場産業として盛んになったのか。また、なぜ生産量が減少し、どのようにこの危機を乗り越えようとしてきたのかを整理します。

①今治でタオルつくりが盛んになったのはなんで?
中国四国地方は、中国山地の北側の山陰。瀬戸内海に面した瀬戸内。四国山地の南側の南四国の三つの地域に分けることができます。今治市が位置しているのは瀬戸内。中国山地と四国山地に挟まれた瀬戸内は夏と冬の季節風が山地に遮られるため、晴天の日が多く、日本の中でも降水量が少ないのが特徴です。この気候に適してたのが綿花の栽培で、江戸時代から綿花の栽培が始まっていた。江戸時代後期には今治藩が伊予木綿(白木綿)を全国に出荷していた。
今治.png

しかし明治以降、大阪や兵庫などで安くて質のいい木綿製品が作られるようになり、今治の繊維産業は衰退。

1886年(明治19年)、今治の繊維産業復活の戦略として矢野七三郎が和歌山で作られていた綿ネル(毛織物に似せた綿織物)に独自の改良を加えて、より丈夫で暖かい「伊予綿ネル」を完成させる。

1894年(明治27年)、阿部平助が4台の織り機を導入してタオル作りを開始。

1910年(明治43年)、麓常三郎(ふもとつねさぶろう)が二挺式(にちょうしき)バッタンと呼ばれる織り機を考案し、同時に2列のタオル生地を織る技術の登場で生産性が格段に向上。

1918年(大正7年)、中村忠左衛門が「織る→晒す→染める」の順番を「晒す→染める→織る」の順の製法に改めた。先に水に晒すことで、やわらかい風合いのタオルに仕上げる事ができる。これは、石鎚山(いしづちさん)に連なる四国山地の山々から、豊富で良質な軟水の伏流水がある事で実現している。
※伏流水
河川敷や山麓(山地と平地との境界部)の下層にある砂礫層を流れている極めて浅い地下水。

その後、1929年(昭和4年)の世界恐慌で繊維業界は大打撃を受け、第二次世界大戦の今治空襲でタオル工場の88%が焼失した。それでも、今治タオルは消滅することなく、1960年(昭和35年)に生産額日本1になった。

②今治タオルの生産額が低下しているのはなんで?
1980年代後半から、安価な外国製品に押され、1991年をピーク(約5万トン)に、2009年には最盛期の5分の1(約1万トン)まで生産額はおちこんでいる。

③今治タオル復興にむけた動き
2001年、安価な外国製品による生産額低下に対する危機感から、経済産業省に対しタオル製品に対する繊維セーフガード発動を要請。しかし、許可が降りないまま2004年調査打ち切り。
※セーフガード
セーフガードとは、特定品目の貨物の輸入の急増が、国内産業に重大な損害を与えていることが認められ、かつ、国民経済上緊急の必要性が認められる場合に、損害を回避するための関税の賦課(ふか)又は輸入数量制限を行うもの。

2003年、今治市の補助金2億円を投じて、今治タオル工業組合が銀座に今治タオル専門店をオープン。しかし、補助金の終了と共に3年で閉店。

2006年、中小企業省が手がける「JAPANブランド育成支援事業」に採択され、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏にブランディングを依頼。今治タオルブランドのロゴマークを制定し、一定の基準を満たしたものにロゴの使用を認めた。ロゴマークは「安心・安全・高品質」の保証になるという位置付け。吸水性を保証するためにタオル片を浮かべて5秒以内に沈むかテストする「5秒ルール」などの試験項目がある。

今治タオルロゴ.png

2007年、百貨店やショップなど、小売業の営業や広報担当者をタオルアドバイザーとして育成する目的として、「タオルソムリエ制度」を実施。

2007年、東京伊勢丹新宿店で今治タオル常設販売

2008年1月23日、「クローズアップ現代(NHK)~地域再生のヒントを探せ~地場産業復活の条件」の放映

2008年10月、第一回タオルマイスター叙任式。タオルマイスターは「知識・経験に裏打ちされた最高の技術と技能を身につけ、若手のみならず、中級・上級者の範となるべきもので、地域社会に貢献する人格も備えた者」と定義され、第1回では名匠4名を選出。

2009年9月、フィンランドヘルシンキで開催された見本市「ハビターレ09」に出展

2010年、生産量がプラスに(前年比0.2%)

2010年、組合員が今治タオルブランドを理解するよりどころとして「今治タオルブランドマニュアル」が取りまとめられる。

2012年、今治タオル南青山店オープン

2017年4月、今治タオル本店をリニューアル。今治タオルLABを新設。

佐藤可士和氏中心とした「本質的価値」×「戦略的イメージコントロール」によるブランディングが成功し、「今治タオルを聞いたことがある・聞いたことはあるような気がする」という認知度調査では、2004年の36.6%、2008年の50.2%、2012年の71.0%と上昇が見られている。しかし、今治タオルの生産量は、2010年以降7年間生産量を伸ばしていたものの、2017年に1万1468トンで前年比4.7%減と落ち込んだ。組合員数や従業員数は年々減少しており、適正な生産量を探っているという見方もあるが、今後の新たな展開や動向に注目していきたい。

参考

今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略

今治タオル 奇跡の復活 起死回生のブランド戦略

  • 作者: 佐藤可士和
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2014/11/20
  • メディア: 単行本


・タオルデータ(平成29年統計表)
・「今治タオル」人気が直面する11年目の試練(東洋経済ONLINE)
・衰退一途の今治タオルが息を吹き返した“大事件” (ITmediaビジネス)
・今治市タオルの歴史(TEXPORT今治)
・「今治タオル」復活の立役者が東京進出で目指す「第2フェーズ」 藤高(dmenuニュース)

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