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理科の指導で読解力を鍛える [読解力をつけるにはどうすればいい?]

理科の授業を通じて読解力を育成する先行事例の中で、中島雅子氏と堀哲夫氏が共同で執筆している「理科教育の読解力育成における研究」が、授業に即活かせる認識が詰まっていたので整理していきます。

アメリカの理科教科書の手法を紹介した鶴岡義彦氏の主張
鶴岡義彦(千葉大学教育学部教授)は、これまでの理科教育で「言葉・文・読解」を軽視する傾向がみられたと指摘した上で、理科教育にも読解が重要な活動であると主張。読解力育成における具体的方法の一つとして、アメリカの小学校の理科教科書にみられる手法を紹介。

(アメリカの理科教科書の特徴)
「読む前」「読み進めているとき」「読了後」のそれぞれにおける「学習に役立つ読み方(Reading to Learn)」が示されている。
内容としては、「読む前」にその話題について何を知っているかを自問する。「読み進めているとき」は推論し、結論を導き出す。など、メタ認知的活動が重視されている。

※メタ認知
学習者が自分で自分の人となりや、学習の状態を評価し、それによって得た情報によって自分を確認し、今後の学習や行動を調整する力。

具体的には以下の4点の言語活動が示されている。
①単語や語句に注目した言語活動
アメリカでは、理科における重要用語の理解と定着を目指した教材が多数認められる。
科学用語を重視し、その正確な意味の理解を目指すとともに、用語(単語・語句)の語源やつくり、日常の意味との差異に留意するようにうながしている。
学習者がもともと持っている用語や概念の意味や理解内容を確認した上で、科学的な概念の正確な理解を促している。

②文や命題に注目した言語活動
命題を重要な学習内容の1単位を成していて、別の明大と関連付ける事によって新たな価値ある内容(命題)を作り出したり、他の知識や情報との関連において、種々の疑問を生み出したりする事ができる。

③段落や文章の全体構成に注目した言語活動
まず単元の全体像を把握して、話題の焦点をつかみ、その話題に関する既有の知識を想起・整理した上で、本単元での学習内容を予測する。

④読解技能や批判的思考力を鍛える
当該の節を超えて他の節や章や単元での学習事項も、更に日々の経験とそこから得た知識を使って考え、書く。

鶴岡氏の提案は、学習の過程における言語活動を重視し、メタ認知の育成を通じた読解力の向上を目指している。

概念の形成過程を可視化する
学習者自身が、自身の学習過程を確認する事は読解力の育成にはかかせない。また、読解力の向上には「メタ認知」の育成が有効。そのためにも「学習者が元々持つ概念」や「その変容」を自覚するとともに、それらを教師が把握する事が重要。

具体的な提案として「一枚ポートフォリオ法(OPPA:One page Portforio Assessment)や「真正の評価」論が上げられる。これらは、概念の形成過程に注目した評価。

メタ認知とは、自分の思考に対する思考であるので、自分の現在の状態をまず確認するための「外化」、それを踏まえた「内省」、さらに「内化」という過程をたどる事が必須。したがって、次の点を注視する必要がある。

①学習者が外化した内容が可視的になっていること
②学習者と教師が外化された同じ内容で確認ができること
③学習者が外化した内容よりも少し上の資質・能力のレベルに対して教師の働きかけが可能になること

外化と教師のフィードバックによる働きかけにより学習者の内化が可能になり、その過程がスパイラルになされていく。

メタ認知の前提となる自己評価
読解力の育成には、学習を通して「学習者が持つ元々の概念」や「その変容」を自覚するとともに、それらを教師が把握する事が重要。つまり、適切な読解力は自己評価によって育成される。教師がいくら口を酸っぱくして説いても、学習者自らが自己の既有の知識や考えに対する不適切性を自覚しない限り、修正や改善などの必然性は生まれてこない。

学習の家庭のあらゆる場面において、学習者自身が適切な自己評価を行う事により、学習者は授業の中で学習内容の修正や改善を繰り返し、かつ確認を行うことになるので、「内化」「内省」「外化」と相まって、メタ認知の育成につながると考えられる。

今日の学びと今後の追求テーマ
・授業構成として、「命題(テーマ)の提示」→「生徒による外化」→「内省を促すフィードバック」→「内化」というのが一つのサイクルとして効果的だと感じました。
・内省を促す際に、自身の概念と教科書を照らし合わせるという作業も組み込めないか検討していきます。
・生徒に単語や語句の正確な理解を促すためにも、まずは講師が曖昧な語句の正確な意味を把握する必要があると思いました(例えば天体であれば「惑星」や「天体」といった用語)。
・アメリカの理科の教科書に載っているという「Reading to Learn」の詳細を調べてみます。
・「一枚ポートフォリオ法」や「真正の評価」については把握していないので調べてみます。

参考
理科教育の読解力育成における研究-概念の形成過程を中心として-

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